原子力政策、二つの特殊性のぶつかり合い

原子力の平和利用を考えたときに、日本の特殊性は際立っています。
一つは地震国であり、津波大国だということです。
そんな危険な国土に原子力発電所を置いてよいのかという議論になります。
もう一つは資源小国です。
量も価格も国際政治に大きく左右される石油にエネルギーを頼るのは安全保障上きわめて危険であり、原子力発電は必要だという議論になります。
(※今回の事故を見ると、原発が攻撃受けたときに壊滅的な被害をもたらすという安全保障上の問題も浮き彫りにされましたが、ここではその議論は置いておきます)
8月20、21日に行った共同通信社の調査によれば、「脱原発依存を次期首相が引き継ぐこと」について、「賛成」「どちらかと言えば賛成」をあわせると75.5%だそうです。
今後は間違いなく、脱原発の流れに進んでいくことでしょう。
ただし、私たちが忘れてはならないことは、すでに原発・原子炉が存在し、すでに使用済み核燃料が存在し、すでに高レベル低レベルの放射性廃棄物が存在しているということです。
これらをどうするかという技術的な方策は立っていません。
つまり、これら放射線を出し続ける厄介な物質をどう処分・処理するかという研究は今後も継続的に続けなければなりません。
「脱原発」により、原子力産業は成り立たなくなります。産業として成り立たないところに自然に研究者が集まることはありません。すると、国策として研究者・技術者を確保・養成しなければなりません。
自由に職業を選べる国ですから、国策として研究を誘導するとなれば、それなりの報酬を出さねばなりません。そこに多額の税金をつぎ込むこと、その金額の是非を判断すること、研究成果を評価すること、すべてが困難に満ち満ちています。
スーパーコンピューターの開発や宇宙開発よりも、はるかに成果が見えにくく、成果のとらえにくい分野です。
しかし、脱原発に舵を切るのであれば、この覚悟だけは絶対にぶれてはいけないのだと思います。


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