1月6日の千葉日報に驚くべき記事があった。
『オオカミで有害獣を駆除』という記事だ。
大分県の豊後大野市でオオカミを輸入してイノシシやシカの駆除に利用する構想を検討しているというのである。
市長は言う。「激減するハンターの代わりに、有害獣を捕食するオオカミの復活を考える必要がある」
即座に沖縄のマングースの失敗を思い出す。
わが国の生態系にない動物を持ち込んで大きな問題となっているアライグマやブラックバスの事例もある。
オオカミを輸入して成功する確率は大きいとは思えず、想定外のしっぺ返しが懸念される。
ハンターが激減する中で、オオカミが増えすぎたら今度はどうするのだろうと思うのは私だけではないだろう。
オオカミ輸入はさておき、全国的にイノシシやシカによる農産物被害がそれほどまでに危機的だということはしっかりと受け止めねばならない。
そして、その駆除を行うはずの猟友会員は激減しており、かつ高齢化が深刻だ。
そもそも農家の平均年齢も高まる一方で、現在JAが大々的にキャンペーンを行っているように、農機による事故も急増している。
こうした農業分野の高齢化、担い手不足、担い手不在を考えると、農業は重層的に危機的だと言わざるを得ない。
今後、わが国農業が生きのびていけるかどうかは、一つには農地の集積が進むかどうかにかかっているように思う。
もし仮に、農地集積が出来なかったとしたら、わが国農業の未来は非常に暗い。
数ヘクタール規模の農地であっては、将来的にも農業分野に新しい担い手が現れるとは考えにくいからである。
現在行われている戸別所得補償制度は残念ながら農地集積に資する政策とは思えない。
いま一つは、農業の特徴が家族営農である以上、家族という単位に焦点を当てたメリットが必要だと思う。
土づくりの重要性を考えれば、短期的な利益を追及する経営体では農業の発展にはつながらないように思うのである。
農地集積に最優先に取り組み、そのうえで家族単位での経営にインセンティブを与える。
当然、農林水産省分野の政策ばかりではなく、政策は税制を含めた広範囲に及ぶものとなるだろう。
農業問題が重層的に危機的である以上、その対策も当然重層的にならざるをえないのである。
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