野中広務・辛淑玉の対談「差別と日本人」から(第317回)

角川ONEテーマ21新書の表題の対談集を読んだ。
正直なところ、神奈川に生まれ千葉や東京で育ってきた私には、「部落」や「朝鮮」の人たちというのは縁が薄い。
高校の修学旅行で四国へ行った際、ある町役場に『部落差別をやめよう』というような意味の垂れ幕がかかっているのをバスの車窓から見かけた。
そのとき初めて「部落差別って何だろう?」と思ったのだった。
さて、「差別と日本人」のなかに紹介したい箇所がある。
熊本地裁で勝訴したハンセン病回復者の訴訟団が、国が控訴しないように首相官邸前に詰め掛けたときの話である。
もちろん彼らは官邸の中に入れてもらえない。
そこにたまたま野中氏が通りかかるのである。
野中氏は、すぐに訴訟団を官邸入口の応接室に入れて話を聞き一人ひとりと握手をして励ました。
そのとき、彼らから控訴をしないように要請されたのだが・・・
『「僕のところに来たって解決しない。あんな小泉みたいな変った奴がおるんだからね。これは策を弄さなあかんということで、公明党の坂口力さん(小泉内閣の厚生労働大臣)に会う段取りを付けたんだ。坂口さんは非常に良心的な方だからね。そこでこう言ったんだ。「公明党の代議士で、医者をしている福島豊というのが厚生労働を専門にやっている。彼は良心的だから、彼をこれからここへ来さすから、福島と一緒に坂口さんのとこへ行ってほしい。まず坂口さんに話をして、坂口さんから総理に意見を上げてもらおうじゃないか。そうでもしないと、反小泉の僕が関係しているのがわかったら、小泉は反対するよ」』
国が控訴を断念した裏にはこういうことがあったのかと私は初めて知った。
良心的と評された福島豊氏が民主党候補者に敗れたのは残念でならない。
さて、この話にはもう一段の奥がある。
これでハンセン病回復者の思いは叶ったが、実は「在日」の人は含まれていなかったのだという。
国内の差別が解決してもつねに「在日」の人たちは忘れ去られているのだという。
このことも私は初めて知った。


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