慢性期の病院は儲からない?(第361回)

秘かに敬服する原田泰氏の「日本はなぜ貧しい人が多いのか」(新潮選書)を読んでいて少し気になったことがある。
それはP140の『「高齢化で医療費増」は本当か』という章である。
厚生労働省「医療費の動向」によれば2007年度の70歳以上の高齢者一人当たり医療費は75.7万円、70歳未満では16.1万円だという。
原田氏がこの金額を元に2007年度の国民医療費を計算したところ33.4兆円だったという。これは良い。
問題は、2025年の将来人口から上記の金額で試算したら37.8兆円だったという点である。
何年も前の話だが、船橋市議会の松嵜裕次議員に高齢者医療費の資料を作ってもらったことがある。
このときには厚生労働省は2025年の国民医療費は56兆円だとしていた。
37.8兆円とはあまりの違いである。この理由は何か?
原田氏によれば、厚労省の試算にはインフレ率と技術進歩が加味されているからだという。
そして、このうちインフレ率を加味したのは間違いだと指摘している。
もう一つの技術進歩のほうは否定していないが、私にはこれも良く分からない。
なぜなら、新しい治療法や薬が開発されたとしても、それが高齢者医療費だけの増額要因になるとは思えないからだ。
70歳以上、70歳未満の年齢に関係なく両者の医療費に跳ね返ってくると考えた方が自然ではないか。
そして試算として推計値を出す以上、年齢に関係なく計算すべきであろう。
やはり、どうも厚生労働省の試算はいまひとつ信用がおけないのである。
さらに言えば、最初に書いたように、70歳以上と70歳未満で4.7倍もの医療費格差というのも違和感を覚える。
それは、実際問題として慢性期の病院ほど利益があがらないという声を聞くからである。
高齢者医療費が毎年どんどん増えているということと慢性期の病院経営が苦しいという二つの命題がどうもしっくり行かないのである。
この辻褄あわせをしっかりした証拠をだして説明してほしいものである。


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