週刊ダイヤモンド11月6日号のコラム『金融市場 異論百出』加藤出(東短リサーチ取締役)はヨーロッパ各国の国民性を比較していて面白かった。
たとえば、英国政府は10月20日に890億ポンド支出をカットする強烈な緊縮財政を発表した。
その中には、年金支給年齢を66歳に引き上げるという項目をあったのだが、英国民は発表当日こそデモがあったが翌日は静かになっていたという。
ドイツでも厳しい財政支出削減が示されたが暴動はなかった。
ところが、フランスではサルコジ大統領が年金支給年齢を60歳から62歳に引き上げたところ、激しいストライキ、デモが勃発したのである。
なんとなくラテン系の人たちは熱狂しやすいというイメージがある。
事実かどうかは皆目不明だが、そういうイメージが私たちの中に何となくできている。
だから、アングロサクソンやゲルマンは平静を保ち、ラテン系は数十万人規模の激しい抗議行動という心の中にある定型にピタッとおさまる気持ちよさがあった。
このコラムについて、ここまでは「なるほど面白いものだな」で済んでいたのだが、その後の話からだんだん様相が変わってきた。
それは、こうしたフランス人の反応に対して、アメリカのタイム誌が次のように書いたというのである。
「怠惰なフランス人はわかっていない。年金や補助金は生産的な労働者が税金を払って成り立っていることを」
この批評をわれわれ日本人はどう受け止めるだろう?
まず、大和民族である日本人も英国人やドイツ人と同じように冷静沈着を保つだろう。
間違ってもデモやストライキなどはしない。
かつてそうした行為をしていた世代は現役を退き始めている。
するとタイム誌の論法によれば、日本人は年金や補助金は生産的な労働者が税金を払って成り立っていることを理解していることになる。
もしタイム誌が日本人をそのように捉えているとしたら、それは浅い見方である。
われわれ日本人が冷静沈着でいられるのは、そもそも歳出カットをしないですむ方法を知っているからなのだ。
この方法を使えば、歳出カットもせずに済み、年金の支給年齢も引き上げる必要はない。
そう。次世代へ借金として付け回せばいいのである。
日本の雑誌なら言うだろう。
「フランス人はわかっていない。年金や補助金は将来へ付け回せることを」
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