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『国会事故調』報告書の重み

『国会事故調 報告書』を読まねばと思っていました。
600頁は、簡単に読める文章量ではありません。それでも細切れの時間を使ってガシガシと読んでいます。
僥倖に恵まれなければ、日本という国そのものが壊滅状態になった甚大な被害を思えば、調査は恣意的なものを絶対に廃さねばなりません。ところが、添付CDの会議録を読めば読むほど心が暗くなる一方です。

調査委員の野村氏が、SPEEDIの情報が海外へ流れていたのを知ったのはいつか、と担当者に尋ねる場面です。
野村「(略)文部科学省はいつの時点でそのことを知っておられたのか」
渡辺(文科省局次長)「(略)アメリカ、米軍には情報を外務省経由で流しておりましたが、外国政府に流れていたということは承知をしておりませんし、外国の機関に流れていたということは承知しておりません(略)」
野村「ちょっと私の聞き方が悪かったかもしれませんが、防衛相経由でアメリカの当局に流れているということは、それはいつの時点で承知されていたんでしょうか」
渡辺「アメリカ軍に対して外務省経由で流れていたことは承知をしております」
野村「いつの時点で」
渡辺「その意味で言うと、アメリカ軍にも行っているということなので、アメリカ政府にも行っていたと思います」
野村「もちろんそうだと思いますが、いつの時点で承知されていたんでしょうか」
渡辺「外務省に情報を提供したのは3月14日でございます」

日にちを尋ねるにもこんな調子ですから、調査委員会は相当難儀したことでしょう。
この文科省局次長氏には、『二度と重大な事故を起こさないために、原因を徹底検証しなければならない』という思いが感じられません。国民のために働くべき国家公務員にしてからこうですから、当事者ではどうなるのだろうかと心配になります。
心の暗くなる内容ではありますが、頑張って読んでまいります。
(写真は、3・11直後の宮城県沿岸部です)

災害対策と海上輸送力の確保

4月6日の公明新聞・土曜特集は、河田惠昭関西大学社会安全研究センター長のインタビュー記事でした。
河田教授は、南海トラフ巨大地震についてこう話しています。
『約700市町村に被害が生じるスーパー広域災害では、そのすべての自治体を救援することは難しい。11万人の陸上自衛隊が行う救援活動には限界がある。救援の手が行き届かない地域が自力で頑張るために大切なことが連携だ。』
東日本大震災において、私には非常に気になったのが自衛隊の輸送力でした。『揚陸艦』がないというだけではなく、かなりの程度米軍の力を借りなければなりませんでした。
また、海上輸送に活躍したフェリーについては、いろいろと考えなければならない点があると思いました。
妻の故郷が宮崎県だったので、私はしばしば川崎から日向へのオーシャンフェリーを利用させてもらいました。
私のように計画的に休暇を取れない者には、前もって航空券を予約することができません。遠方への移動手段はフェリーの2等に飛び乗るしかないのです。
そのフェリーが、時代の流れとともにどんどんなくなっています。もう東京から宮崎へいくフェリーも、一度は乗ろうと思っていた宮崎から屋久島へ行くフェリーもいつの間にか無くなっていました。
その一方で、東日本大震災でのフェリーの輸送力は目を見張るものがありました。
たとえば、太平洋フェリーは陸上自衛隊員20181人・車両5605台、都道府県関係者2066人・132台、消防局1506人・274台、警察513人・99台など、合計25888人、車両6406台を輸送しています。
中長距離フェリー15社では、総計66800人、車両17900台です。もしフェリーがなければ救援の手はどれほど滞ったかと思います。
南海トラフ大地震が起こることが想定されている中では、フェリーを存続させておくことも大事な災害対策です。私は、自衛隊の輸送力をさらに向上させることともに、民間フェリーの確保も忘れてはならない課題だと思っています。

振り返ることの大切さ

東日本大震災のような災害への対策を考えるためには、言うまでもなく過去を振り返ることが大事です。
その時、医療施設はどのようなことになっていたのか。
その時、福祉施設はどのようなことになっていたのか。
非日常の大きな問題が起こった時に、より一層、制度の不備や人の能力の限界などが表面に出てくるものだと思います。そこから解決すべき課題が見えてくるのでしょう。
たとえば、朝日新聞に連載されている『プロメテウスの罠』の第十三章『病院、奮戦す』には、福島第一原発に近い医療機関でのすさまじいばかりの看護が語られています。
また、時事通信社の『地方行政』2013年3月18日号には『知的障がい者らの避難』ということで、岩手県山田町の「はまなす学園」の奮闘ぶりが取り上げられています。
現場を預かる医師や看護師や施設職員のプロとしての心意気やボランティアや自衛隊員、行政関係者等々の尽力ぶりが紹介されていると心が温まります。
その一方で、紹介されない膨大な数の『失敗』もあったこととと思います。むしろ、そうした失敗にこそ私たちが学ぶべき教訓に満ちているかも知れません。
神戸には『人と防災未来センター』のような情報を収集する拠点があります。東日本大震災においても、やはり同様の情報収集の拠点を設けてもらいたいと思います。
過去を振り返り、精密に災害下における看護、介護、避難を検証することが欠かせません。そのためには、嫌なことであれ、貴重な経験を収集する仕組みをつくらねばならないと思った次第です。

旭市の津波対策

2011年3月11日14時46分頃、三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震は、旭市においても津波による大きな被害をもたらしました。
これまでの海岸防護の考え方は、浸食、高波、高潮に対する施設整備でしたが、これからは防護施設の高さの見直しを余儀なくされます。
今日は、そうした防護施設の中で普通河川の整備についての視察をおこないました。
地域の雨水の排水や生活排水の役割を持つ普通河川については、市町村が管理者となります。これら普通河川も当然津波による被害は受けますので整備が必要です。ところが、普通河川については国による補助事業がありません。すなわち市町村が単独で行うしかありません。
普通河川の整備を自治体が単独で行うことは極めて困難であり、国による財政支援制度や対策に関する法整備が欠かせません。これを何とか実現したいと言う観点から視察を行いました。
また、帰りには旭市の事業ですが、建設途中の津波避難タワーの見学もさせていただきました。旭市や千葉県の関係者の皆様に心から感謝いたします。

消防団員をどう守るか

今朝の朝日新聞に『津波、水門閉鎖より避難』『国交省指針 消防団員向け改定』と言う記事がありました。
私の心の痛みだったテーマの一つが消防団員の命の問題でした。
東日本大震災では死者及び行方不明254人という多くの消防団員の方々が犠牲になりました。このうち水門や陸閘を閉鎖したり、避難誘導にあたって亡くなった方々は59人に上りました。
消防職員でもない民間人が、命の危険にされされている現状はなんとしても改善しなければなりません。
とは言え、対策は現状のところ、水門や避難誘導よりも本人の『避難』を優先するという方法しかありません。
そこで、岩手、宮城、福島3県の沿岸37市町村のうち17市町村が消防団員の退避ルールを見直しました。その状況が報じられたのが昨年12月12日の読売新聞でした。
私としては、残る市町村はどういう結論を出すのかを注視していましたが、それより早く本日の新聞で国交省が指針を見直すと言う記事がでたのでした。
実は、同じく昨年12月14日の岩手新聞には『岩手、宮城、福島3県の消防団員は、1年半たっても5人に一人が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する可能性が高い』という記事がありました。
今まで研究対象にもされていなかった分野です。
現在、千葉県では水門閉鎖を自動的に行おうという計画を進めています。自動閉鎖がすべてを解決するものではありませんが、より具体的に、より実践的に解決策を見出す努力をしてまいりたいと思っています。